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百万の薔薇よりその一言を
DC​
​快斗×赤井
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​全年齢向けです。

2017年6月21日
フローティングハート

"Happy birthday, Kaito!"
眼の前にさっと差し出される薔薇の花は、数えていないけれど、きっかり年の数だけあるのだろう。
赤井はそういう男だし、去年もその前も誕生日といえばこれだった。
だから、寝室には当然のように別のプレゼントが用意されているはずだというのも、もう分かっている。
そういう演出は嫌いではないし、自分を喜ばせたくてやっているのだろうことはむしろ素直に嬉しいのだけれど。
「あー、もう。去年も言ったじゃん。そういうの、ホントいいから」
腕を振って、深紅のそれを押し退ければ、赤井は傷ついたような表情をする。
「だが、きみ」
折角のバースデーなんだ、とかなんとか、言い訳めいたことを口にする赤井は、俺が何を言いたいのかなんてとっくに分かっているはずなのだけれど、肝心のそれは口に出さないものだから、俺は余計に焦れて、苛々する。
半分は、一足先に二十歳になった工藤もまとめて、毛利のおっさんに無理矢理飲まされた酒のせいかもしれないけれど。
はぁっ、とアルコールの混じる息が赤井に届いたかどうかはわからない。
憎たらしいほど長身なのだから。
抱き着いて腕を回せば自然にその鼓動が耳に届く程度には。
「快斗って呼べよ、赤井」
要求すれば、脈打つ心臓の音が、僅かに跳ねる。
「……かいと」
赤井は、日本語で俺の名を呼ぶのが苦手だ。
いつも、君だのボウヤだのと呼ぶ。
だけど、
「……快斗、誕生日おめでとう」
赤井の声に生まれてきたことを寿がれて、その腕の中に身を預ける、その一瞬が何より大事な『今日』だから、英語に逃げるのは許さない。
「飲もうぜ、赤井。二十歳になったら一緒に、って、約束だ」
「その最初の相手に、君が俺を選んでくれなかったのは残念だが」
「しゃーねえだろ。赤井が昨日帰ってこなかったのが悪いんだぜ」
赤井から仕事だと連絡があったから、今日の夜まで帰らないだろうと踏んで、俺は工藤の誘いに乗ったのだった。
おかげで、日付が変わると同時に開けようと思っていた赤ワインは未開封のままだ。
伸びあがって口づけ、普段より熱い体温を、ゆっくりと赤井に分け与える。
アルコール交じりの唾液に溶かされて、乱れる息の下、始まったばかりの大人の夜は、密かにその気配を深めていった。

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