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それを無価値と君が言うなら
​DC
安室×赤井(安室→沖矢)
age restrictions R-18

挿入を含む性行為の描写があります。

2016年8月1日
フローティングハート

安室君は、行為の最中には俺の名を呼ばない。
せめて赤井でもいいから、と何度頼んでも、彼が抱くのはいつだって「昴」だ。
行為の瞬間、俺が赤井秀一であることは彼にとって嫌悪の対象ですらあるらしい。
秀一の顔で抱かれながら、「昴さん」と呼ばれる度に、俺の中の「赤井秀一」は価値を失くしていく。
だから、今日は、昴の顔で彼を待つことにした。
どうせ、秀一など彼は欲していない。
夜毎甘い睦言の下、真綿で首を締める様にじわじわと存在を消されるくらいなら、自ら彼の望むように振る舞うほうがいくらかはマシだ。
引き出しにしまいっぱなしにしていたチョーカー型の変声機を装着し、ウィッグを被る。
それからキッチンへ向かって、今夜彼に出す夕食のメニューを考える。
外で食べてくるはずだと考えている俺の向こう側で、
「今日はシチューにしましょうかね」
などと能天気に手を打つ昴。
空の冷蔵庫を覗き、顔をしかめて、
「近所のスーパーが閉まる前に買い物に行かないと」
などと独り言を言いながらいそいそと出かける準備をする。
二人きりの食事に、また五・六人分のシチューを作って、『作りすぎてしまったので』などと明日の夜まで彼を引き留めるのだろうか。
彼はオフの前日にしか、俺を抱きに来ない。
俺の内側でずっと彼を見ていた昴も、それは知っているはずだった。

「ここ、気持ちいいですか? ねえ、昴さん。ここ、好きでしょう?」
ぐりぐりと前立腺を刺激されて、思わず彼にしがみついた。
背中に爪を立ててしまって、怒られる。
けれど、彼を強請る腰の動きは止まらない。
「ひっ、ア、ン……いいっ、そこ、ぃいっ!」
昴の嬌声と卑猥な水音が混ざり合って俺の耳を叩く。
「今日はやけに積極的ですね。いつもは、イく瞬間だって静かなのに」
安室君は秀一の声など聞きたくないだろうと思うから、秀一の姿で抱かれる時には、俺は声を出せない。
嫌われたくないのだ。
彼に不要だと言われたくない。
「昴」なら、こんな声を出しても、彼に喜んでもらえるけれど。
「秀一」では、だめだ。
「とても可愛いです、昴さん」
安室君の唇が、昴の声を吸い上げる。
彼にキスされる昴に嫉妬しながら、俺の意識は白く染まる。

君が昴を望むなら、俺はもう、君の前に姿を見せない。
けれど、好きでいることだけは、許してほしい。

朝になれば、安室君は、昴に目覚めのキスをするだろう。
 

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