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常識のない大人達​
​DC
​工藤家×赤井
age restrictions PG-12

性行為を匂わせる単語表現があります。

2016年7月23日
フローティングハート

食卓に用意された四人分の夕食に、ようやく父さんが帰国していることを実感する。
締め切りが近いとかで、帰宅してすぐに書斎にこもってしまったせいだ。
「おかえり」
「ただいま」
それ以上の言葉を交わすこともなかった。
父さんと一緒に帰ってきた赤井さんも、二階に行ったままだ。
どうせいつも通り、父さんの寝室で本でも読んでいるんだろう。
あの二人の関係は、よくわからない。
ずっとファンだったと赤井さんは言うし、父さんは父さんで大事な読者だと言うけど、絶対にそれだけではない。
二人の間に性的な関係があるのだって、俺が知っているぐらいなんだから秘密でもなんでもない。
出迎えの時、母さんは赤井さんをハグしながら父さんとキスをしていた。
まあ、うちの両親が普通でないことは、昔から知っちゃいるけれど――自分の夫と寝ている男を、何の嫌悪もなく受け入れられるものなのだろうか。
よく、わからない。
「秀ちゃん! ご飯よ!」
母さんが、赤井さんを呼ぶ。
もう三回目だ。そろそろしびれを切らす頃だろう。
父さんに関しては、もう出てくると思ってないらしい。
「しゅーうーちゃぁん?」
ほらみろ。
声がだんだん尖ってくる。
「秀ちゃんってば!!」
「聞こえてないんじゃないか? あの人、集中しだすと周りが見えなくなるタイプだから」
父さんと一緒で。
何度呼んだって、無駄だろう。
「こらぁっ、秀一ィ! 聞いてるの!?」
こりゃあ完全に怒らせたな。
知らねぇぞ……。
やれやれと肩をすくめる俺を少し睨んでから、母さんは、元人気女優とは思えない足音を立てて階段を昇っていく。
あーぁ……。
父さんの部屋のドアが勢いよく開く音。
「秀一っ! ご飯だってさっきから呼んでるでしょ!? さっさと降りてらっしゃい!!」
怒鳴られた赤井さんが素直に出てくるまでにかかった時間は、わずか一秒足らず。
本当にこの女だけは絶対に敵に回したくない。

食卓での話題は、今日も俺の学校で起きたことが中心になる。
父さんがいればホームズの話や最近解決した事件のことも話せるんだろうけど、赤井さんは俺と母さんが話すのに任せてて、自分からは話題を振ってこない。
時々世良のことが話題に登れば少しは食いついてくるけど、大概は「ホー……」と相槌を打つだけだ。
そんな赤井さんに、母さんは少しつまらなそうな表情をしていたが、
「秀ちゃん」
と突然真顔で呼びかける。
「最近、優作とはどうなの?」
ちょっと待て。
いきなりなんてことを言い出すんだ?
「え?」
ほら、赤井さんも固まってるじゃねぇか!!
「ちゃんとセックスしてる?」
「……っ!?!?」
母さん!!!
いくらなんでも直接的すぎるだろ!?
赤井さんコーヒー噴いたし!
すげぇ咽てるし!
「赤井さん、大丈夫かよ?」
「……あ、ああ。ボウヤ、すまない」
咳してる赤井さんも可愛いけどな。
涙滲んでるし……。
じゃねぇよ!
「母さん!!」
「だって、気になるじゃない」
くそ。
この女、悪びれもしねぇ。
「だって、秀ちゃんてば、放っておくと何でも我慢しちゃうんだもの」
もっと自分に素直になってもいいのよー、じゃねぇよ。
赤井さんも赤井さんで、すみませんとかじゃねぇから!
おかしいだろ!?
なあ、おい!!
「赤井さん!? 母さんの言うことなんか気にしなくていいからね!?」
「先生は、今、忙しくて」
「あっ。優作のやつ、また原稿が~とかなんとか言って秀ちゃんのこと放置してるのね?」
だーかーらー!
そういう問題じゃないだろ!!
「いいのよ、秀ちゃん。自分で誘っちゃいなさい」
このクソババア!!!
「何か言った? 新ちゃん」
「いや、何も」
「あら、そーぉ? ババアなんて言ったらその口縫い付けるわよ?」
「わぁってるよ!」
「ならよろしい」
心を読むなよ、というか読むなら他のところにしろ!
「秀ちゃん、遠慮しないで誘っちゃっていいのよ? あれで優作も秀ちゃんから可愛くおねだりされたら断れないはずだし」
「母さんが遠慮しろよ! 息子の前だぞ!?」
年頃の男子高校生の前でなんつー……、
息子がグレてもいいのかよ。
「うるっさいわねぇ……心配しなくたって、後で新ちゃんの相手もしてくれるわよ」
「そうじゃない!!」
「あら? 秀ちゃんじゃ不満? 理想が高すぎるとモテないわよ?」
「違う!!」
赤井さんが可愛いのは知っている。
俺だって彼と寝たことが無いわけじゃない。
コナンだって受け入れたこの人に倫理観を求める方がきっと間違ってるんだろうし、コナンの姿でこの人を犯しておいて父さんとの関係がどうこうと言えたことではないのもわかってる。
けど――、
「いい、秀ちゃん。なんでもいいから理由をつけて優作を書斎から引きずり出すのよ? とにかく押し倒しちゃいなさい。絶対流されてくれるから」
「おい!!」
「……わかりました。やってみます」
「何言ってんだ、赤井さんッ!!!」
なんなんだ、この会話。
「もう。さっきからうるさいわよ、新ちゃん」
こっちだってツッコミ疲れてる。
服部、お前実は偉かったのかもしれねぇな……。
「嫌なら蘭ちゃんのところにでも行ってなさいな。二時間ぐらいで終わるから」
「そういう問題じゃないだろ!?」
「じゃあ、どういう問題なのよ?」
「あぁあああ!! なんでわかんねぇんだよ!?」
くそっ、頭にくる!!
「出かける!」
「あら、蘭ちゃんのところ?」
「そうだよ!!」
こんな大人たちに囲まれてるくらいなら、おっちゃんの酒の相手をしてたほうがまだマシだ。
「いってらっしゃい。あまり遅くならないでね。いいタイミングで帰ってこないと、秀ちゃん寝ちゃうわよ」
どういう意味だよ!?
起きてたって、誰が抱くか!!
どうせ母さんに見られながらか、父さんに盗聴されながらか、どっちかだろ!?
っつーか両方だろ!?
冗談じゃねぇ!!
「ったく!!」
 
父さんは赤井さんを可愛いという。
赤井さんは、父さんを優しいという。
母さんは、そんな二人の関係を認めてる。

 

常識の通じない大人たちの間で、思春期の俺の忍耐力は、試されている。

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