top of page
​銀月
​DC
赤井×ジン
age restrictions R-15

挿入はありませんが、性行為に準ずる描写があります。

2016年6月6日
フローティングハート

真夜中に時満ちた月を、ゆっくりと雲が隠していく。
やがて降り出した雨は、外界の喧騒から全てを覆い隠しながら、心のうちにざわめきを運んでくる。
さらさらと指先から流れ落ちる銀糸を弄びながら、赤井はそっと月の顔(かんばせ)を濡らす雫に舌を這わせた。
そこに残るクレーターのような傷痕は、赤井自身がつけたものだ。
この白く美しい顔に、自らの存在を証だてる。
当時において赤井にその自覚はなかったが、その行為には、確かに子供じみた独占欲が混ざっていたことは、今となっては疑いようのない事実だった。
体温の低いジンの肌は、酷く白く、その髪の色と相まって、闇の中で一際目立つ。
生きているのが不思議なくらいだ――そう、まるで、陶器で出来た人形のようにも思える。
けれども、その胸の飾りをそっと抓めば、指の下で、確かな鼓動が跳ねた。
別に行為に及ぶ気はないのだ、
――ジンがこうして秘密裏に自分と会ってくれているというだけで、満足すべきなのは理解している。
ただ深く口づけだけを交わして、触れた指から、その冷えた熱を刻む。
何もかもを放り出して彼を味わえたなら、
以前のように、
まだライと名乗っていたあの頃のように、
そう思わないでもないが、赤井もジンも、互いに立場のある身だ。
「愛している」
彼を一番困らせるその言葉と共に吐き出した紫煙が、その姿を視界の向こうに覆い隠して――やがてそれが晴れるころには、ジンはいつものように皮肉な笑顔をこちらに向けていた。
けれど、その一呼吸前、ジンがよぎらせた不安の表情に、赤井が気づかないはずもなかった。
――傷ついたような表情(かお)をする……。
愛を囁かれることは、幼いころから愛情を奪われ続けてきたジンにとっては、苦痛でしかない。
知っていて、赤井はわざと言うのだ。
「ジン、俺はお前を愛しているよ」
それは赤井の本心であると同時に、暗い願望を孕んだ狂気でもある。
通り雨が過ぎて、欠けゆく月が窓に映る。
淡く輝く銀の光に照らされて闇に浮かぶジンの姿は妖艶で、月の魔力に魅せられたかのように、赤井は微笑み、ジンの薄い唇を吸い上げた。

――『あの方』がお前を満たすなら、俺は同じだけの愛をもって、お前を朔へと導こう。
愛しい愛しい宿敵さん。
ゆっくりと欠けていくお前の心が、いつか俺と同じ闇に染まるまで。

Glass%20of%20Drink_edited.jpg

Wix.comを使って作成されました

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
bottom of page